短いメールで考えさせる
彼が戻ってきて間もない時期だと思うのですけれど、全世界の中心的なメンバーに対して2行ぐらいの非常に短いメールが出ましてね。だいたい2行のメールが多いのですけれど「世界中の倉庫を全部キャンセルしろ」と。当時、日本ではシンガポールの工場から船便で持ってきて、千葉などに倉庫があって、そこからトラックで日本中に送っていたわけですね。とにかく倉庫は絶対必要だと。その倉庫に対して「倉庫をなくせ」という指示なのですね。それだけなのです。そこで、特に物流関係の人たちの間では「ああ、彼は物流のことわかっていない」と。「倉庫がなくて、できるわけない」と。「いや、きっと倉庫にいくらいくらお金がかかっている、だからやめろと言っているだけじゃないの」という感じだったのですけど。ただ僕自身は「そんなわけないなあ、何が言いたいのだろう」と思って。メッセージが短くて明確なのですよね。だからそこには何かあるに違いないと思って、ずっと考えて、1週間ぐらいかかりましたけれども。これは「なんでそもそも、倉庫がいるのだろう」と考え始めると、ものを大量に作って、船で運んで、ためて、そこから出荷していくからだなと。考えてみたら、大量に、一気に処理をしないで、少しずつ出せばいいじゃないかと。でも船で少しずつ出すことできないなと。あ、だったら、飛行機で飛ばせばいいやと。というので、実はiMacのときからスタートしたのですが、シンガポールから直接飛行機で日本中のあちこちの空港に飛ばしたのですね。飛ばしたときに、置く場所がないので、直接販売店に持っていくと。でも販売店さんに倉庫がないのですよね。店頭に置き場所はないですから。で、どうしたかというと、販売店さんで売れた数だけを報告をいただいて、それをシンガポールで作って、その日の夜に飛ばして翌日の夕方までには届けるというサイクルを作ったのですね。それをやったところ、倉庫はいらなくなったのです。で、彼にあとから「なぜ、物流のこととか、販売のこととか詳しいのだ?」と聞いたことあるのです。すると「アップルができたときは、パソコンの販売店とか流通とか1つもなかったと。だから俺は自分で作ったのだと。だから他の誰よりも販売のこととか物流のこととか詳しいぞ」と言われて。あと、ディズニーストアにDVDとか昔のビデオテープとかありますよね。それはそういう方式をとっていたらしいのです。で、彼はそれを知っているのですよね。だから答えを知っているのですよ。それで2行のメールで「倉庫をなくせ」と。何をしたら倉庫をなくせるかは実はわかっているのですね。わかっているのだけれども、全部教えて、やっても、そこにはスピリッツが入っていかないのですよね。単に、表面的に、言われたことをやりましたになってしまって。そうではなくて、2行のメールから考え抜いて「こうやったらできる」となったら、その中には、例えばわたしは、それを考えたときに明確にイメージがあるわけですね。こうやったらできるという。その人が実行した方が、実行がパーフェクトにできるということなのですね。ですから、そういった意味で、非常にわかりやすい短い命令をポンと出すのですよね。